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サンドイッチマン
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屋外で仕事をする人は天気の変化を一番気にします。ある日、雨が急に降りだしてきたので、僕は看板を担いで近くのビルの出入り口に入って雨宿りをしようとしました。そこにはすでに一人のサンドイッチマンが立っていました。 彼は入ってきた僕をじろじろ見ながら、「この辺には縄張りがあることを知らないのか?」と話し掛けてきたのです。 「なんですか?」と僕は聞き返し、「縄張りだよ。知らないのか?ここは俺のところだから、お前はここに入っちゃダメなんだよ。」と向こうはとても理屈ぶった顔でした。 「外はまだ雨が降っているのに僕はどうすればいいと思ってるんですか?僕だってここにいたくはないんです。雨がやんだら、すぐ出て行くんですから。ちなみに、あなたがこのビルを買ったんですか?そうじゃないなら、俺のところだなんて言ってる場合じゃありませんよ。」と、弱々しく見える彼を見つめて僕は強気で言いました。 しばらくの沈黙があったのち……。 「お前、どこの出身だ?」 小さな彼は僕の日本語の発音に何か気づいたようで、びくともしないで僕に聞き返したのです。 「北海道。」と本当らしく言って見せた僕。 「なるほど。お前の日本語はちょっと変だね!お前の親は何をしているんだ?」と彼は悟った様子。 「雑貨店をやっているんだ。東京の物価は高いね!」 「……。」 田舎くさい僕を胡散臭げに見つめながらも結局黙り込んでしまった彼……。 雨は止みました。夕方から気温が急に下がり始めました。僕が鼻をすすっていると、「こんにちは、寒いですね!」と一人の元気そうなおばさんが話し掛けてきてくれました。 おばさんはとても優しい目つきをしながら熱い缶コーヒーを一本取り出して僕にくれました。「熱いうちに飲んでください。私はその辺で広告を配っていますから、よろしくお願いしますね。」と彼女は言いました。 僕も遠慮せずに彼女のコーヒーを受け取って、「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!」と言いました。 そのときはちょうど12月の下旬だったので、スキー用品はよく売れました。買う前にスキー用品の価格を把握するため、僕のところに広告紙を取りにくる人はたくさんいました。ですからその間は毎日広告紙を多く配ることが出来ました。 まったく取る気のない人は、広告紙を受け取っても、またどこかに捨ててしまうので、地下通路には広告紙がたくさん散らばっていました。 仕事をしているうち、僕はある一つのコツを見つけました。つまりサラリーマンが退社するときは広告配りのピークになり、6時近くになると、広告紙を取りに来る人はもうほとんど来ないのです。 ですから、6時になったら、僕がそこに立っても無駄なのです。そこでずっと立ちっぱなしでいるよりむしろ近くで少しぶらぶらしたほうがいいと、ある日僕は思いました。 ちょうど道の向こう側は百貨店の高層ビルが聳えているので、その後僕は時々そこでぶらぶらするようになりました。半時間くらいぶらついてきた僕はまた客のない人ごみに向かって仕事をするのでした。
30日の夜、そろそろあがりの時間に近づいたころ、スーツを着ている酔っ払いが僕のところを通りかかってきました。寒い風の中に立っている僕をみて、彼は僕の肩をたたきながら、「がんばっているね!」と誉めてくれたのです。 また彼は自分の財布から一束の千円札を取りだして、見るとおよそ7、8枚くらいあったでしょうか、執拗に僕にくれようとしたのです。 僕はとても不安になって彼の好意を断ろうとしました。しかし、彼はしつこく僕にお金をくれようとしたので、仕方なく、僕は彼からお金を受け取ったのです。 ただし、僕はそのお金を二つに分けて半分を彼に返し、半分は僕のポケットに入れました。「私達ふたり半分半分でどうですか?」という僕の提案を聞いた彼は、とても喜んで、まるで自分が得したかのように「ワハハハ!」と笑い出したのです。 店長は新年も休みなしと決めたので、僕は正月も仕事をするしかありませんでした。お正月の一日から三日まで、仕事で過ごしました。その間毎日、仕事が上がるとタイムカードにいつも「お年玉」と書いてある紙袋がついていて、中に1000円札一枚が入っていました。 新年も過ぎてしばらくすると、ほかの友達が僕に本格的な力仕事を紹介してくれました。給料も今の仕事より高いし、しかも家にも近いのです。 僕はこの立つだけの「力仕事」をやめることにしました。僕がやめたとき、ちょうど仕事をはじめて半月後のことでしたが、8万円もの給料をもらったので、悪くはない業績でした。 店長は僕のやめることをとても惜しく思ってくれたようで、他にやりたい友達がいれば紹介するように僕に頼んできました。しかしちょうどそのとき仕事を探している友達はいなかったので、彼の頼みに答えることはできませんでした。 春分を過ぎたころ、その店は他人に譲られたと聞きました。今でもときどきあの若い店長のことを思い出すたびに、彼の事業を惜しく思っています。上一页 [1] [2] 尾页
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