経済学者たちは、随分前にIT産業の発展を予測したそうです。たとえば、パソコンは、データを大量に保存できるということと、デモンストレーションなどの優れた機能を持っているので、膨大なデータをパソコンの仮想空間に保存し、画面上で逐一ディスプレイするといったことが可能になります。それゆえパソコンが普及するにつれて、紙の需要は大幅に減るだろうと、経済学者たちは予測したのです。
経済学者の予測を聞いた製紙会社と印刷会社の社長たちは、落ち着きを無くしました。「そうなったらどうすればいいんだろう?まさか多角経営をとって、これからワンタンでも売らにゃなるまいか……。」と!
Windows95の誕生によって、パソコンはIT専門家の研究室から出て、普通のオフィスに進出しました。インターネットの普及につれて世界はグローバル化の一途を辿っています。
製紙会社と印刷会社の社長たちは、この「ライバル」の急成長ぶりを、見たくなくとも見せられる日々の中で、自分たちにいつか悪運がやってくるのを待っていました。
しかし、結局その悪運が訪れることはありませんでした。それどころか、パソコンの普及につれて紙の需要は急増したのです。しかも、良質の紙の需要が急増したのです。
印刷会社の社長は、パソコンの説明書の注文が大量に入り、さらに説明書に使用される紙はすべて良質の紙だということに気づきました。
さらに、説明書の更新はとても早く、ソフトの新バージョンが誕生すると、すぐ新しい説明書の注文が入ってくるのです。
印刷会社は忙しくて忙しくて、商売悪化の兆候など、さっぱり見えてきません。するとある日、印刷会社の社長は製紙会社の社長にいいました。「なんだ、このライバルはまさか俺達の大恩人なんじゃないか?!」と。
二人の社長たちがお酒を飲んでいると、長い間の恐れや悩みから溜まったストレスが、一気に怒りに変わりました。「なんだ、あの経済学者野郎!あいつらこそ、まさに本業をやめてワンタン売りに行くべきじゃないのか!」と。
そうして彼らは、ようやく鬱憤を晴らすことができたのです。