今の世の中は少しヘンなようです。同じものだけど、違う扱い方をすることがよくあります。同じ言葉でもまったく違う意味で使っている場合もよくあります。
なんだか「幾家歓楽幾家愁」(喜ぶ人間も悩んでいる人間もいる)といったニュアンスが感じられますね。
たとえば「脱毛」がそうです。「脱毛」は、多くの人間が悩んでいる「病気」であるようです。日本のことわざには「禿より白髪」というものがあります。これは「脱毛症」の悩みを語るものですね。
日本人の男性は、とくにビジネスマンとサラリーマンの中に「脱毛」で悩んでいる人が多いようです。
同じ「脱毛」でも、もう一方の「脱毛」は、今大繁盛している商売の名前です。
頭に生えた「毛」は「過保護」の傾向がありますが、体のほかの部分の「毛」については、まるで親の「敵」のような感じです。
少女たちだけでなく、男の子の間でも「脱毛」が流行っているそうです。
「脱毛」の目的は、もちろん「綺麗」になるためですが、それがお金になる仕事であると分かると、お医者さんは大急ぎで「脱毛」の科学的根拠を探すまでの大騒ぎになり、これを専門にするお医者さんも出てきた程です。
それだけでなく、美容院も一晩で「脱毛サロン」に様変わりしたところが多いようです。
この前、自宅の近所の駅で、ホームの向こう側に新しい広告看板が立てられました。一番乗る人の多い場所に「脱毛サロン」の広告がでかでかと掲げられたのです。
色合い鮮やかな脱毛写真は、電車を待っている男性の「目の保養」ともなっています。間もなく、電車の自動扉のガラスにも、「脱毛サロン」の広告を見かけるようになりました。
一回脱毛、永久脱毛があり、値段の差はかなり大きいです。安いところでは、3点脱毛で2万円か3万円、高いところでは、数10万円、100万円以上のところもあります。
そのほかに脱毛講座、脱毛コンサルティング、脱毛医療など、あっという間に次々と大繁盛の職業が姿を現したのです。
脱毛という職業はどうしてこんなに繁盛するのでしょう?やはり最近のファッションと流行に関連があるでしょうね。
最近の女性のファッションは「露出」を特徴としたものが流行る一方です。それに従って少女たちは、「毛だらけ」というのは少女のイメージとあまりに似つかわしくないと思う人が増えたようです。
最初は、剃刀を使っていた人が多かったようですが、剃れば剃るほど「毛」が濃くなり、その上チクチクと刺されて痛いくてかないません。
薬品を使って脱毛しようとする人もいますが、薬品の安全性と効果が問題になっているようです。アレルギーが起きたらかえって傷跡になる可能性もあります。
神様が人間に授けた、この一見なんでもないものを消すことが、こんなに困難だとは思いもよりませんでしたね。
さあ、お医者さんの出番です!レーザーで一本ずつ毛根を取り除いてから、再生を抑える薬を塗るのが効果ありそうです。手術は複雑で、麻酔も必要になります。代金も自然と高くなります。なにしろ贅沢なサービスですからね。
近代的なビジネスですから、もちろんアフターサービスがあります。三年間保証とか、五年間保証をつければ、もう一つ料金を取る項目ができますね。
女性は脱毛したいと思う気持ちは、理解しやすいですが、男性の「脱毛願望」の原因は何でしょうか。この質問こそが問題だと怒る人もいるかもしれません。
なにしろ今のファッションのもう一つ傾向は「性の無差別化」だそうですから。性別を変えたいという人は、病気による人が多いようですが、流行しているからという理由で、遊び感覚でやっている人もかなりいます。
とにかく、「自分の好きなイメージでファッションを選ぶ」、という個性派が急増してきたので、生まれつきの性別はもうあまり問題にならないようです。公衆トイレに入る時、問題になるだけでしょう。
脱毛の価格表は店によりかなり違うようです。医療機関なら「初診料」「絶縁針料」「検査料」「脱毛料」などなどがかかります。
脱毛の基本は両脇と「あそこ」になりますが、「ビキニライン」とか「V字ライン」とかの名で呼ばれていて、その命名の科学性には思わず感心させられます。
他には、手と足の表、指、背中、腕、足、ももなど、30ヵ所以上並べるところもあります。普通の「脱毛サロン」なら、簡単明快に「一ヶ所いくら」という料金体系を取っています。
自分の「毛」には恨みが一杯なのに、その一方で、動物のふわふわした「毛」は大好き!という流行があるようです。
今年の冬は、ふわふわした動物の毛を身につけることが流行りました。帽子、襟、キーホルダー、スカート、袖、バッグ、いたるところでふわふわした「毛」を見かけます。
この流行は、脱毛と関係があるかどうか分かりませんが、何とも不可解な現象であると言わざるを得ませんね。
もしそれらが本物の動物の「毛」を使っているということなら、本当に痛々しいことです。アイドルやスターが生み出すこうした流行は、あっという間に何百万人もの少女達によって真似されるわけですから。
もし少女達が、自分の「毛」をふさふさにして、それがおしゃれだと思うようになれば、脱毛する手間もかからないし、動物も義性にならないし、一挙両得、すべて丸くおさまるではありませんか!
でもそういう訳には絶対に行かないんでしょうね――。