ネット上で新聞を読むと、とくに社説を読むたびに、よく人を笑わせる記事に出会うものです。それはまるで「相声抖包袱,総要掉出来」(漫才をしている時、思いがけず出されるネタのこと)のようです。
たとえば、最近話題になった狂牛病の記事を見ると、ある記事は一面殆ど狂牛病についての知識や政府の対応、学者の話、それに輸出入の制限や発病地域の報道といった、真面目な内容で埋められているのに、突然、その真ん中にこんな話が出ているのです。
それは主に、狂牛病の噂が株式市場で混乱を及ぼした、という内容でした。たとえば、マクドナルドや吉野家などの牛肉使用の食品を生産、販売する企業が株安になった一方、魚の消費増加が予測されて、結果として、日本水産や日魯漁業やマルハなどの株価が絶好調!となったなどなど……。
なんだ!災害の中、泣く人もいれば喜ぶ人もいるもんなんですね。
さらに続きを読むと、今度は政府の対応について取り上げています。狂牛病にかかった牛が出た事実は、もうすでに証明されたにもかかわらず、農林水産大臣は相変わらず日本の牛は問題ないと、強気で言い張るしかできないようです。その上で、大臣は自ら狂牛病が発見された地域に行き、わざとたくさんの牛肉を食べて見せたというのです。
それどころか記事は、その農村が自民党の味方で、しかも自民党がそれまで日本の農産品の価格を維持するために一所懸命だったこともあって、その上今回大臣が危険を冒して農民達の牛肉を保証するということに、多くの農民は感動してしまうだろう、と述べているのです。
でも少し深く考えてみると、イギリスでは狂牛病にかかった牛が200万頭あまりであったのに対し、狂牛病にかかった人は80人くらいだそうです。たぶん彼は、自分がその極少数の被害者にはならないと思っていたのかもしれませんね。
また別の角度からみれば、病原を判定できないときに、何の根拠も無くみんなの前で牛肉の質を保証するなんて、消費者に対する無責任な行為だと思います。
農林水産大臣が問題ないと言い張ったから、狂牛病にかかる危険はもうないとは言えないし、不運にも狂牛病にかかってしまっても、彼一人に責任を負わせることは出来っこないのです。それは一目瞭然ですよね。
そもそも厚生省は非加熱製剤がエイズの媒介になるおそれがあると知っていたにもかかわらず、非加熱製剤の輸入を禁止しなかったので、結局多くの患者にエイズを感染させてしまったという前例もあるのです。
それでも、厚生省は積極的に責任を負おうとはしませんでした。エイズに感染させられた患者たちが、訴訟を起こして初めてその事実が明るみに出たのです。
しかし、それにしても事態は依然回復しておらず、訴訟は長く、きりのないプロセスになってしまいました。
その事件において、政治家は当然のように責任をすべて厚生省官僚と製薬会社に押し付けていたのですが、今回の事件は、政治家が自ら出馬して主役を演じました。
しかし、いずれも廉価の演出であって、何の効果もないでしょうね。