日本人が中国にやってきて何かイベントをする時、みんな背中に大きな
「祭」が書かれている半纏を着ています。
何も知らない中国人は、その「祭」の文字を見て、みんな忌まわしそうな顔で抗議します。理由は、「中国の習慣を尊重していない!」ということです。
しかし、実はその「祭」はまさしく中国から伝わってきたものなのです。
大昔の農耕時代、民に休日というものはなく、ただ祭の時だけ休むことが出来たのでした。
昔の祭は、死者や祖先を祭るものや鬼を祭るもののほか、天、神、廟、川、山などを祭る祭もありました。
今でも「祭」の文字はお葬式の時に使われる文字です。
祭になると、民はたくさんの供え物を用意しなければなりません。そこで、みんなお供え物を買いに出かけるのです。
それゆえ、お祭のための市場が設けられていました。お祭に参加する人々は、四方八方から市場に集まってきて、こうして次第にお祭は自然にみんなが一緒に楽しむ祝日になったのでしょう。
でも中国では本来の「祭」の意味から、「祝日」は「節日」と言い、決して「祭」とは言わないのです。
でも日本では「祭」は「祝日」です。たとえば東京は11月に「大鳥祭」があります。
「大鳥祭」はここの最も大切な祝日であり、新年を迎える序曲ともいえましょう。
この祭は商売人の祭ともいわれています。大鳥祭の日に、「社長」になる人も、もう「社長」になった人も、みんな「大鳥」の文字がついている神社に、「熊手」を買いにいきます。
それにより、来年の商売の隆盛や家族の幸福、また交通安全を祈るわけです。
面白いのは、いったん熊手を買ってしまったら、毎年それを買い続けなければならない、ということです。しかも、買う熊手のサイズは前年より大きくなくてならないのです。
そうでないと、不吉になるといわれています。ですから、熊手の大きさだけを見ても、その持主の社長歴の長さを窺うことができるんですよ。
『街の宇宙人』
去年のある夕方のことでした。僕は新宿駅の東南口である光景を見かけました。一人の欧米系の若者が、全身銀色のペンキずくめといった姿で(もちろん彼の皮膚も銀色のペンキを覆われていた)公衆電話ボックスの傍で佇んでいたのです。
彼の足元にはお金を集める缶が置いてありました。彼の格好はまるで宇宙人のようで、またちょっとロボットにも似ていたりもします。
「あれっ!日本での欧米人もこんなに落ちぶれてしまったのかなあ?」と、一瞬不思議に思いました。でも、その人の表情を見てみると、落ちぶれた様子は少しも見られません。
一人のいたずらっ子が、その「宇宙人」が用意した缶に100円玉を入れた時、「宇宙人」はすぐ彼に滑稽なポーズを見せて、握手をしようとしたのですが、思いがけないことに、そのいたずらっ子は「宇宙人」の下半身を触ろうとしました。
「宇宙人」は素早くいたずらっ子に同じ仕返しをして、結局やはり腕の長い「宇宙人」がいたずらっ子に勝ちました。いたずらっ子は目的を達せずに離れていきました。「宇宙人」は再び元の姿勢に戻ったのです。
僕はその「宇宙人」の写真を一枚撮りたいと思ったのですが、タダで取るのもちょっと恥ずかしいから、その前に缶に100円玉を入れました。
缶の中は、千円札も少なくなかったので、少し驚きました。(でも後で、ご自分で入れたのかもしれないなと悟りました。)
「宇宙人」は好意的に僕と握手してくれ、僕がカメラを振り上げると、すぐに「勝った!」というポーズを見せてくれました。とても人を喜ばせてくれる人でした。
駅に入ってから、ふと自分の手を見てみると、たくさんの銀色ペンキがついていることに気づきました。おまけに翌日、うっかりカメラのいじり方を間違えて、せっかく取った「宇宙人」の写真を消してしまったんです。
ああ残念!