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通勤パラダイス

作者:胡楠  来源:贯通论坛   更新:2004-7-2 15:48:00  点击:  切换到繁體中文

 


『通勤パラダイス』
 そそっかしい性格の私は、日本に来て早速笑い話を作ってしまいました。
 中でも、JR中央線で初めて通勤した時の事件は、今でも時々思い出し笑いをするようなものでした。
 来日したばかりの人、長い間日本で生活してきた人、あるいはもうすぐこの土地、日本に踏み出そうとしている人、ぜひ
私のこの面白い体験を聞いてくださいな!


 朝8時20分。JR中央線立川駅は通勤客でにぎわっています。チケットの自動販売機の前に並んでいる長い列。その列の中にいる、昨夜寝つけなくて、睡眠不足で頭がフラフラしている私――。
 たくさんのコインを自動販売機に入れて、ボタンを押すと「450円」と書かれた長方形の小さいチケットが1枚、発券口から出てきました。私はそれをしっかり握りしめました。
 手にあるその紙切れは、小さいといっても馬鹿にはできません。それを無くすと、すこし誇張した言い方かもしれませんが、まさにあなたは
地獄へ突き落とされることになるのです。でも、しっかり持っていれば、「目的地」というパラダイスへ行けるのです。
 
 ここで言うパラダイスや地獄というのは、単なる比喩に過ぎません。東京の交通網は大変発達していて、その中でも高速で時間通りに運行されている電車の利用率は最も高いものとなっています。
 さらに便利なことに、利用者が目的地へのチケットを買った以上、何番の列車を選択するかは利用者の自由になるのです。
 初めて来日して右も左もわからない外国人にとっては、
「どの車両に乗ってもイイ」
という大きな利便性を感じることができるのです。
 しかし各交通機関の利用方法や、異なる運行会社に属する路線への乗り換え方は、外国人を困らせたり、不安を与えたりするものです。
 特に、日本人さえ恐怖感を持っているラッシュアワーの様子は、
「通勤地獄」
とも言われています。ですから、通勤時間にも関わらず、悠々と席に座れるような電車に乗ることを、私はパラダイスという言葉で表現したのです。
 
 その日の朝、東京行きのプラットホームに立っていた私は、悲壮感いっぱいの気持ちで「通勤地獄」に向かおうとしていました。親切な日本人の友達の話を思い出し、恐怖が膨れ上がってきたのです。
 親切な友達はこう言いました。「このあたりは交通手段が少ないから、中央線に乗る人が一番多いのよ。体の自由がきかないのは普通だし、ひどい時には呼吸さえままならないということもあるのよ。来たばかりだから、慣れるのは難しいと思うよ。
よく覚悟しておいてね。」――

 しかし、私の目の前にはパラダイスがあったのです!運良く席が空いている車両を見つけることができたのです。でも実は、そのパラダイスにはある条件が必要だったのです。そのことに気づくのは、もっともっと後のことでした…。

 猛スピードでホームに進入してくる電車の中に、とある車両を発見した私は嬉々としました。なぜかというと、その車両は普通よりも快適そうに見える座席ですし、加えてそのいくつかが空席だったからです。
 私は新大陸を発見したかのように興奮しました。そして何も考えずに、さっさと夢のように私の前に現れた車両に飛び乗りました。
 席に座った私が、どんなに嬉しい思いでいたかは想像できることでしょう。安心感で一杯になった私は「これからずっとこの時間はこの車両に乗ろう!」と、心の中で決めていました。
 でも不思議なことがありました。このパラダイス車両に乗らないで、まだホームに立っている人々が大勢いるのです
 「こんなに快適な車両があるのに、他の人は何で次の電車を待っているだろう?この車両が気に入らないのかなぁ…?」と思いました。でも、その疑問は、窓の外の景色を眺めているうちに、頭の中から消えてしまいました。
 
 余裕シャクシャクの心境で、これからの通勤という名の戦争を勝ち抜いて行けると確信した私は、通勤が楽しいものに思えてきました。その安心感ゆえ、時間の経つのがとても早く感じました。でも、車両内に乗務員の姿が現れた時、事態は思わぬ方向に進んでいったのです。
 制服を着ている、愛想の良い男性乗務員は、乗客のチケットをチェックし始めました。その親切な態度を見て、私は「さすが日本のサービスは違うなぁ。」と感心しました。
 彼の仕事に少しでも協力できるように、私は早めにカバンの中からチケットを取り出しました。間もなく、その乗務員が私のところに来たので、私は微笑みながら既に用意したチケットを出しました。
 それを見た乗務員はすばやく「新宿、500円になります。」と私に言いました。それを聞いた私はびっくりしました。すかさず「これはきっと自分が間違って切符を買ったのだ。その精算をしろということなんだ。」と思い、50円を財布から出して払おうとしました。しかし、その金額を見た乗務員は首を振って私に説明しました。
 「お客様、新宿までは乗車券に500円を追加しなければならないのです。今お手にされているのは50円ですので、まだ450円が必要になりますが…。」
 私はとても驚きました。でも、周囲の人の冷たい視線を感じたので、できるだけ冷静に、残ったお金を支払いました。
 
 どうしても納得が行かなかったので、会社に着いてから、同僚に事の一部始終を話しました。そして、同僚の話を聞いてようやく事情を把握したのです。乗ったのは通常の電車ではなくグレードの高い「特急」だったのです。
 私は間違ってチケットを買ったのではなく、間違った電車に乗ってしまったのです。「特急」に乗るには「特急券」を買うという条件が必要です。
 その条件が高価であるため、他の人はホームで次の電車を待っていたのです。これで、駅で感じた疑問が解決できました。

 「せっかく、あんなに快適な通勤列車に乗れたのに、追加でお金を払わなきゃならないなんて!電車は電車でしょ!」と思って、初めはとても悔しかったのですが、事実を知ってからは、「地獄に遭遇しないで、通勤パラダイスを体験したのだから、このくらいの出費は仕方ないとしよう。」と自分を慰めました。
 このような冒険的な経験をしてから、私は周囲のことに対して慎重に対応し始めるようになりました。パラダイスや地獄といった言葉は、単なる一種の修飾語です。
 しかし、真新しい環境の中で、何気ない気持ちで起こした過ちが、自分で解決できない状況を引き起こすことになったら、その言葉は単なる修飾語ではなくなるのです。
 今回の事件は「これからは何事に対しても注意し、気をつけるようにしよう。」と強く思う良いきっかけとなりました。

 あなたも私みたいにそそっかしい性格の人間ですか?もし、そうであれば、一緒に頑張ってそれを直すようにいたしましょう!


 

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