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初めての営業会議

作者:胡楠  来源:贯通论坛   更新:2004-7-2 15:50:00  点击:  切换到繁體中文

 

 『初めての営業会議』
 私は日本語を専門に勉強していて、あと一年で卒業する予定の大学生です。先日から、AIESEC(アイセック)という世界的な学生組織の紹介で、東京にある某IT会社での2ヶ月間の研修を受けています。
 
 IT会社とはいえ、私が担当しているのは、日中対訳作業や旅行についての資料の収集など、ごく簡単な作業です。
 このような仕事でも、私の専攻を十分に活用できる上、自分の言語能力を高めるのにとても良い機会となっています。
 加えて、社内の雰囲気も非常にフランクなもので、一般的な人々が抱く日本企業のイメージである、
上司と部下の厳密な区別
や、怖そうな雰囲気といったものはありません。
 さらにうれしいことに、国際交流を重要視している、思いやりのある会社のリーダー達は、いろいろな面でよく面倒を見てくれます。
 彼らは、経験の少ない私に、できるだけ多くのことを体験するチャンスを提供してくれています。そんなこんなで、初めて正式的な「社会人」になった私は、もっとこの貴重なチャンスを活かしていきたいと常に思っています。
 いつも心の中で「頑張れ!」と自分のことを励ましたり、「2ヶ月後には新しい自分に生まれ変われそう!」と期待したりする毎日です。

 研修が始まった週の金曜日に、私は初めて会社同士の本格的な営業会議に参加することになりました。それは私が
生まれて初めて参加するビジネスの営業会議
でした。
 会社の上司は、前もって私に今度の会議の主旨について説明してくれました。その業務は中国市場に関わっているので、中国人の立場から意見を出したり、会議の進行状況に合わせて積極的に発言してほしいということを要求されました。
 この突然出てきた、より積極的な思考が必要とされる新しい仕事に、私は
興奮すると同時に大きな不安
も感じました。興奮の原因は、この仕事は、今手掛けているただ「言語」という道具を使えばできる、ある面ちょっと機械的な作業より、面白そうだからです。反対に不安に感じたのは、自分の業務知識の足りなさや言語能力の未熟さです。
 相当真剣に考えた私は、ようやく完璧ではないですが、自分にとっては新しいアイディアを含んだ提案を作りあげました。そして、自分が参加する会議で、よりよい成果が出せるよう十分な心構えをしました。
 
 午後2時10分、私たちは目的地に到着しました。早く着いたので、ビルのロビーで10分ほど待ってから、相手側の会社の入っている階に向かいました。
 私は、きっと中国と同じように、会社の玄関では綺麗な若い女性が受付をやっているだろうと思いました。ところが実際は、受付には綺麗な女性どころか、
人間もいませんでした
――と言っても、怖がったりしないで下さいね。勿論、妖怪がいたわけじゃありません。
 受付には一台の大きなコンピューターがあって訪問者と担当者をつなぐ対応をしていたのです。その特別に製造された、床に立っているコンピューターは手で入力できる構造になっています。人が近づく度に、優しくて綺麗な音声が流れてきて、訪問者に「約束をしている担当者に連絡しましょう。」と案内してくれるのです。

 上司がアポイントを取っていた担当者の名前を入力すると、1分も経たずに、ある肌の白い、しとやかな女性が私たちの前に現れました。
 お互いに挨拶をした後、彼女は丁寧に私たちを会議室に案内してくれました。日本のビジネスの席ではほとんどの場合、敬語が使われています。相手を尊敬し、重要視している感じを与えるためです。
 案内してくれた女性の態度はとても親切でしたので、その会社に対するイメージが大変良くなりました。あとでその女性が実は中国人であると知った私は、誇りを持ちながら、彼女の流暢な日本語や上品な仕草に感服しました。
 会議室に入ると、お互いに改めて名刺交換をしました。研修生の私に名刺がないことを、上司は丁寧に説明してくれました。
 相手側の女性は私が彼女の同胞(中国人)であることを聞いて、嬉しそうに名刺を渡してくれました。敬意を表すために、私は両手でその名刺を受けて慎重に見てから、丁寧にその名刺をノートの中にしまいました。
 その女性が私たちに出すお茶を取りに会議室から出た時、私は上司に注意されました。つまり、受け取った名刺をすぐしまわず机の上に置けというのです。このことは
日本のビジネス慣行
だそうです。私はすぐ言われたとおりにしました。
 
 双方が椅子に座ったあと、相手方の女性は、参加する予定である2名が、他の仕事の関係で少し遅くになることについて説明してくれました。
 上司は了解し、既に用意した資料を出して、彼女に現在の会社の業務状況について紹介し始めました。彼女はすぐ自分のノートを取り出して、礼儀正しく上司の説明に相槌を打ちながらメモをしていました。
 会議は穏やかな雰囲気の中で進んでいきました。面白い話題に触れた時には、双方で笑うなどしました。しかし、それまで発言のことばかりが気になって緊張していた私は、
とても笑うことなんてできませんでした

 「具体的な状況を知らない人はたぶん、この会議が正式なビジネス会議ではなく、親しい仲間の集会として見間違うのではないだろうか。」と心の中で思ったりしていました。
 また、窓の外に広がる東京湾の美しい景色を眺めて、私はこの綺麗な環境で働いている人たちのことを羨ましく感じるようにもなりました。
 
 30分ほど過ぎた時、他の二人の会議参加者――30代で、そのプロジェクトのリーダーと思われる男性と、一人の若い女性が会議室に入ってきました。私たちはすぐ立ち上がって、挨拶をしました。先にもやった名刺交換の儀式をもう一度行った後、会議は続きました。
 その二人が参加した時から、会議の雰囲気は知らず知らずのうちに緊張の度合いを高めていきました。相手側の男性社員はすでに話題の中心になっていました。
 彼はこちらの説明を真面目に聞きながら、資料の中に記述されている興味を持った部分について、質問をしました。上司はその都度質問に答え、それに私たちの考え方や私たちとの提携を受け入れさせようと努力していました。

 話題がだんだん業務内容の深いところに達するにつれて、双方の会話のスピードが速くなってきました。私は彼達の言っている内容がよく聴き取れず、
状況が分からなくなってきました

 私は焦ってきて、何度もコーヒーを飲んで自分の頭を冷静にしようとしました。しかし、どんなに頑張って聞いても、理解できる内容はやはりほんの少しのままです。
 私はついに諦めざるをえなくなりました。皆に失礼にならないように、私は意図的に今までのように、目線を発言者の人々の間に移していました。
 聴き取れない自分を情けなく感じて相当落ち込んでいる中、上司は話題を変え、私に意見を述べさせようとしました。みんなの注目が集まったので、私は大変緊張しましたが、冷静に自分のまとめたものを思い出そうとしました。
 ところが、過度の緊張に加え、日本語能力に自信が持てなくなっていた状況だったので、準備した内容の
半分も述べることができませんでした

 
 思ったよりも早く発言を終えた私でしたが、相手側の担当者が私の言っていることを理解してくれたことに安心感を覚えました。彼らは絶えず頷いてくれました。
 しかし、私の考えでは、頷くことはただ日本の文化背景の中で、相手の話をきく時の
一種の慣行に過ぎない
と思っています。
 即ち、それは別に話し手の言っている内容を理解・肯定しているのではなく、向こうに対して敬意を表しただけのことを意味しているのです。
 
 私の初めての営業会議は、私の発言の後、程なく終わりました。よく聞き取れなかった私には、勿論会議の具体的な結論を知る由もありません。でも、その結果は私の発言と同様に、充分に満足の行くものでなかったということは私にも直感的に分かりました。複雑な気持ちで私はその明るい、暖かい会議室を離れました。
 帰路、「自信満々にもう一度このような場所へ戻るのは、相当先になるんだろうなぁ。
まだまだ長い長い道を歩まなければならないんだろうなぁ
。」と感じました。


 

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