
日本語を勉強したことのある学生には、その人が中国人なのか日本人なのかを見分ける特異な能力があると思います。
大学に通い始めてからは、四方八方、様々なルートから飛びこんでくる日本人や日本についての情報が、頭に溢れるようになります。
すると、これらの情報を自分なりに整理して、日本と日本人のイメージを自分の脳裏に構築することができるのです。
私の通った大学の留学生は、ほとんどが日本人留学生で、日本語を上手に話せるため、我々日本語専攻の学部生たちは、一人につき一人か数人の日本人留学生の「勉強友達」がいました。
「勉強友達」と言うのは、毎週決まった時間に、互いに日本語か中国語かを教え合うことです。中国の今時の言い方では「双方勝ち」といいますね。
こうして日本人留学生と付き合っているうちに、私達は、日本人の話す時の態度、服装やスタイル、物事の運び方など、実際的な認識を持つようになったのです。
いつのまにか私達は、その人が日本人なのか、中国人なのか、はたまた韓国人なのかまで一目瞭然で見分ける「超能力」を持つようになりました。しかも外れることはほとんどありません。
この「超能力」は、私が日本に来てからも、衰えることはありませんでした。それでは、ここでみなさんにそのコツをお教えしましょう。
まず顔から見ると、日本人には中国人と違うところがあります。たとえば、日本人の男性は、顔のラインがちょっと硬くて、眉は濃く、鼻の骨も少し高いようです。
日本人の女性は、皮膚の色が白く、一重まぶたの人が多いようです。(しかし最近は、美容整形の流行で、二重まぶたの人の比率が、年々上昇傾向にあります)。
でも外見的特徴は決め手ではありません。日本人であることを示すもっとも重要な要素は態度と表情です。今の日本人は、食生活やライフスタイルの変化で平均身長はだいぶ伸びました。
統計によれば、18歳以下の日本人の平均身長はもう中国を追い越しています。男性はすらりとした体つき、女性はしなやかなスタイルが多くなってきました。
体のスタイルからは中国人なのか、日本人なのか、区別がつかないほどです。
しかし、歩き方を見たらすぐに分かります。中国人は歩いているとき、太腿まで力を入れて、足の先まで力を入れるようにして歩きますが、日本人は太腿とお尻の部分はあまり動かさず、足の後ろに力を入れて歩くので、足が重たそうに見えます。
中国人と日本人を、それぞれ隊列を組んで畳の上を歩かせたなら、日本人の方が音が大きいと思います。これで区別できます。
表情から見ると、中国人はゆったりとした表情が多いのに比べて、日本人、特に男性の唇あたりには常に緊張感が漂っています。日本人と中国人が混在していても、唇あたりの表情を見るだけで見分けられます。
写真ならもっと分かりやすいです。正式な団体写真を撮る時、日本人はあまり笑いません。子供もそうです。しかし、中国人は写真を撮る時はほとんど笑っています。子供ならばもっと好きなように自分を演出します。
さらに、顔を見なくても声を聞かなくても、声への反応だけを見ても、話し相手が中国人なのか日本人なのかが分かるのです。
最初に他人からそうした経験談を聞いたとき、にわかには半分しか信じられませんでしたが、日本に来てから実際に見てみると、なるほどと納得しました。私の親友の言葉を借りれば、「日本人は大げさですね」というのです。
たとえば、電話のベルがなって、奥さんが電話に出た場合、話の調子が普段と明らかに変化がなければ、その相手はきっと中国人です。
反対にその奥さんの声がいきなり高くなったり、アクセントも明らかに嬉しそうに変わったりして、不自然な親切ささえ感じる場合には、その相手はきっと日本人です。
日本人は電話をかける時、わざと嬉しそうに、優しそうに、重要そうに演技をしているので、聞いているこっちもなんとなく同じ態度で応対してしまいます。
演技が必要だから、普段の話し方より疲れやすいでしょう。聞く方も疲れてしまいます。
街で道をたずねたり、声をかけられたとき、静かに向かってきて、自然と相手の目と顔を見て話し掛けられるのを待っているのは、中国人に違いありません。
呼びかけられると、ちょっと大げさに相手の話を聞く姿勢をとるのは、日本人です。このとき、大体話し相手の顔を見ずに、少し耳を傾けるようにするか、頭をちょっと下向きにして、視線を相手の首とか襟の方に落とします。
つまり日本人は、人と接するのにかなり慎重なのです。知らない人間でも同じです。(この点から日本人の謙虚な態度が現れるのですが、もちろんいわゆる「新人類」はこの中に含んでいません。)
以上が、私の経験や、見分けるコツといったものです。けれども、ここで書いた方法を当てはめても、時には外れることがあると思います。
なぜなら、あの歌にはこう歌われていましたね。「不是我不明白、這世界変化快。」(分からないというわけではないが、この世界は変化が早いものだ――。)