日本の主婦と若い学生がアルバイトをする際、比較的人気のある仕事の一つが、レジ係(以下「レジ」と略します。)です。
というのも、レジの勤務時間はわりと自由度が高いためです。働く時間は1日に3~4時間程度で、大概、事前に出勤したい時間帯を責任者に申し出て承諾してもらえればOKなのです。自分の都合の良い時間帯で仕事ができるのです。
レジの仕事は人の多く集まる大規模のスーパーはもちろん、小規模のスーパーやコンビニにもあります。でも、前者のほうが人気が高いようです。
レジの仕事は簡単そうに見えますが、実際はそうとも限りません。というのも、手と目と脳の高度な協調性を必要とする仕事だからです。
たとえばそこそこの規模のスーパーでは、商品のバーコードを機械に読み取らせると同時に、口で商品の内容と価格、それに割引がある場合には、「○○円割引です。」と復唱することが要求されます。さらに、別途に包装が必要である商品はその都度包装しなければなりません。
これらのことによって、計算間違いにすぐ気付くようにしているのです。また、復唱することで商品の確認にも役立つのです。

お店にとって、商品の配列と価格の表示方法は、お客様がその店を評価する際の重要なポイントとなっています。
たまに一部のお店では、価格の表示が分かりにくくてトラブルに発展してしまうようなことがあります。
たとえば、安い価格の書いてある値札が、間違って高い商品の前に置かれているなどです。
そのような場合、お客様は「これは安い!」と思って高い商品を買物カゴに入れてしまい、計算が済んでからハッと気付く、ということが起こり得るわけです。
男性のお客様は、たいてい面子を保つためか、言いに行くことはあまりないようです。
でもこれでは店の信用度が落ちてしまい、二度とこの店に足を踏み込まないお客が出てくるでしょう。
もし女性のお客様だったら、特に主婦の場合は、その場で言いに行く人が多いので、損をこうむることは比較的に少なくなります。
ましてや殆どのお店は、セルフサービスなので、いくらきちんと商品の整理に気を配っていても、値札がずれてしまうことがしばしば生じます。
ですから、レジ係は計算するときに、商品名と価格を復唱して、お客様に自分の購入した商品の内容と価格を再確認させることが必要となるのです。このことはお客様への信頼を獲得するのに大きく手助けをします。
私は以前、値札の誤りを体験したことがあります。あるスーパーで、とても安い平茸を見かけました。なんと一袋で80円です。椎茸やしめじなどはある程度まで安くなる時がありますが、こんなに安い平茸を見かけたことはありません。
中国では茸が育てやすいので、平茸は日常食べる安い野菜の一種です。なぜか分かりませんが、日本では平茸が高いのです。普通250グラム入り1パックで300円もするのです。ですから、日本に来てからなかなか平茸を買えませんでした。
「これはお買い得!」と思った私は迷わずに2袋を買物カゴの中に入れました。しかし、レジで清算すると、「298円、2点」と言われました。私は298円の商品を入れた覚えがありません。
「待てよ。」と思い、すぐその場でレジに確認をしてみると、結局値札が誰かに移動されたことが分かりました。レジの復唱がなければ危なく高い買い物をするところでした。
レジ係の中には、たまにモラルの欠けている人がいます。ある日、家の近くにあるスーパーに買い物に行ったのですが、勘定を済まして領収書を確認すると、出されるはずの硬貨のお釣りがないのです。
さっそく、そのレジに確認しました。するとその人はすでに私の目的が分かっているようで、てきぱきと600円のお釣りを出してくれました。
私はその出来事を偶然なミスだと思い込みました。しかし、しばらくしたある日、別のスーパーでまたお釣りを貰えないということが起きました。
レジに行って確認しようとしたら、「この顔、見覚えがあるなあ…。あっ、前の店の人だ!」とパッと思い出しました。生活にそう困っているようには見えない人ですが、きっとこの方法でお客様の知らないうちに、小銭を騙し取っているに違いありません。
もうこれ以上見逃しちゃあいけないと思った私は、スーパーの責任者に彼女のことを言いました。責任者の前で彼女は慌てて「ごめんなさい、ごめんなさい。」と何度も謝りました。
でも、もし今度また同じことが起きたら、彼女はもうそこで働けなくなるでしょうね。案の定しばらくしてそのお店に行ってみると、彼女の顔がそのスーパーから消えていました。
はじめてレジの仕事に携わる人は、復唱することに慣れず、しばしば間違いをします。たとえば、開店したばかりのコンビニでの出来事ですが、私が発泡酒を一本買おうとしたところ、レジが新人のようで、商品の表示内容を正確に読み取ることさえできなかったのです。
上に表示される130円は課税前の金額で、実際に支払う消費税込みの金額136円は下に表示されてます。しかし、彼女は、「130円になります。」と言いました。
「えっ!130円ですか?」
「はい、130円です。」
私は何も言わずに130円を出して店を出ていきました。
翌日、私は同じコンビニで前の日と同じように一本の発泡酒をレジに出しました。昨日のレジ係は掃除をしていたので、彼女の代わりにもう一人の若い娘さんがレジのところで立っています。この人も最初、落ちつかない様子で、レジの表示内容を見ながら言いました。
「130円が1点、136円が1点、合わせて…、」その甲高い声が急に止まってしまいました。彼女はとうとう自分の手に一つの商品しかないことに気づいたのです。
あまりに恥ずかしかったのか、彼女はしばらくたってから、やっと「136円お願いします。」と言いました。
開店したばかりとはいえ、この二日間だけでいくらの損をしたか、彼女達にしか分からないことでしょうね。