![様々な形のお皿](http://liuxue.kantsuu.com/UploadFiles/200407/20040706082207416.jpg)
中国では、陶磁器を買うときは普通セットで買います。形や大きさは統一されていて、片付けるときは重ねておくことができ、少ない空間で収まるものです。
まだ日本に来たばかりのときのことですが、ある日、日本人の友達からたくさんのお皿をもらいました。
僕がお皿のたくさん入った袋を持って電車に乗ると、周りから不思議な目つきで見られたのを覚えています。
でもそのお陰で、日本にきてお皿を一つも買わないで済んだので、助かりました。
ところが、そのお皿を実際に使い始めると、それらは形や大きさなどがバラバラで、中国のお皿のように小さな空間できちんと整理整頓することができないという事が分かったのです。
お皿を洗う時もかなり面倒です。食後、形のさまざまなお皿で流しがいっぱいになり、重ねることもできないし、並べるスペースもありません。
そこで皿洗いのバイト経験を持つ友達の助言を聞き、水切りの籠を買ってきて、何とかそのスペースの問題を解決したのです。
また、友達と居酒屋に飲みに行くと、日本のお皿の形は想像以上に実に豊富多彩であることが分かります。四角いものや平たいもの、細長いものなど、それに長い足のついたお皿もあります。さらにただの厚い板が皿代わりになっている料理もあるのです。面白いけどちょっと面倒じゃないのかな?と思ったりしました。
しかもそれのみならず、お皿の使用量もかなり多いのです。普通の小人数の飲み会でも、たとえば7、8種類の料理を注文したとして、その中に途中でお皿を変えられたりする料理が含まれていようものなら、たちまち小さなテーブルの上は、お皿に埋め尽くされた状態になってしまうのです。
途中で変えられるお皿は、必ず前のとは違うお皿になるのです。お店のテーブルはそう広くはなく、二人で飲むときは、2つ、3つの料理といくつかのお皿を置くだけのスペースしかないので、新しい料理がくるたびに、前の料理を乗せたお皿をさげるしかありません。
ですから、僕ら二人は食べながら料理の並べ替え作業もしなければならないのです。
飲み会を何回か経験して、僕はようやくそのコツを少し掴むことができました。日本料理の器は、実に日本料理の特色とその店のサービス方式とに、深く関わっているようです。
余談ですが、中国では、飲みに行ったら、料理の品数にせよ量にせよ、いずれもかなり多いので、店を出るときには必ずみんなお腹が一杯になるものです。飲み会後の集まり場所はせいぜいコーヒー屋かカラOKボックスくらいです。
日本ではよく「二次会」や「三次会」などの言葉を耳にするので、日本人は大食いだなというイメージを受けてしまったのですが、今になって実はそうではないことが分かったのです。
日本での居酒屋の誕生は、手前で立ちながらお酒を飲む人に、簡単なおつまみを作ってあげようという考えからきたそうです。ですから、居酒屋の料理はたいてい一口、二口くらいの量しかないのです。今日の居酒屋は依然として昔の伝統を守っているようです。料理の量が少なく、値段もそれほど高くありません。
居酒屋での食事はお腹の食べ具合が適当でいいので、そこでお腹が一杯になるまで食べるとしたら、お金がかなりかかります。料理の量が少なくても、その量の少なさを紛らわしながら見栄えよく料理を出すために、お店はお皿に神経を使うようになったのでしょう。
![日本の居酒屋](http://liuxue.kantsuu.com/UploadFiles/200407/20040706082211290.jpg)
たとえば、大根サラダという料理を頼むと、普通一人前は200円か300円くらいですが、お皿、あるいはお碗の中に大根の細切りが一握り、その上にコーンなどがちょっぴりとカイワレ大根が乗り、料理を彩ります。
大根は口がちょっと大きい人だったら、一口にも満たない量です。300円の材料費なら何十皿もの大根サラダが作れるでしょうね。
また箸と同じような太さの焼き魚が幾匹も大きなお皿の上に綺麗に並べられ、分けるとほんの1、2匹くらいしか味わえない料理もあります。
日本の居酒屋はもとより中華料理でさえ、日本に来ると、日本のやり方に変わってしまうのです。日本人の友達と一緒に初めて中華料理店に飲みに行ったときのことです。
僕達はマーボー豆腐を注文しました。値段は1200円でした。しかし、出されたお皿こそ大きかったものの、中のお豆腐の角切りは8つしかなかったのです!その時の人数は9人でした。仕方がなく僕は、「よく食べるから」という理由で、この料理を他の8人に譲ったのです。
さらに中華料理も、料理が来るたびに、新しい小皿を用意してくれるようになっているのです。9人もの宴会なら、いくつもの小皿の山が作られるのも想像に難くないでしょう。
「なるほど。これは皿洗いの仕事がなかなか絶えない訳だな。」と僕は思いました。
居酒屋の「刺し身」は日本料理の特徴をよく示した料理の一つです。飲み会の時は、たいていみんなの好みに応えるよう「盛り合わせ」を注文するのです。この種の料理の盛り合わせは「お作り」と呼ばれます。
最も一般的なやり方は、まず大根の細切りを敷いて、その上に、赤や緑のテングサを飾り、さらにシソをその上に敷きます。シソの上に、主役の刺し身が置かれます。
一人前の刺し身は3枚から5枚くらいでしょうか。その傍にわさびが少し添えられます。一見して、料理が皿を全部埋め尽くしているように見えるのですが、食べるものは実に少ないのです。
しかも、刺し身はだいたい一人前800円前後でしょう。なので、よく居酒屋で見かけるのは、本番の料理を食べ終わって、追加注文もしたくないときは、みんな飾りの大根などをつまみにしているのです。
こうして一つの居酒屋で十分時間を潰してから、またどこかのお酒屋さんに行くのです。
ですから、日本料理の「形の良さと見栄えの良さを追及する」という特徴は、たぶん料理の量が少ないところから起因したのではないでしょうか。そしていろんな形をしたお皿を巧みに扱うのも、「少ないものを多めに見せるため」の工夫なのでしょうね。
日本の食品トレイは日本の食器と同じように、その出発点は少ない量のものを多めに見せる効果を狙ったものなのではないでしょうか。
量は少ないけれど、トレイに入れると多めに見えるし、高価なものにも見えます。しかし、家に帰って料理をしてみると、たいした量の料理もできないのに、ゴミ袋はトレイで一杯になってしまいます。
ですから、「発達国家」(先進国家)というのは、包装が発達しているということを意味していて、何とかして人に安いものを高く買ってもらおうとする発達なのだろうと、僕は思っているのです。