
張春雪は小学校4年生です。最近、学校での一連の出来事が彼女を悩ませているようです。
春雪は去年の担任の高橋先生が大好きでした。高橋先生は優しく、しかし勉強の面では厳しく指導してくれて、しかもクラスのみんなと仲良しでした。
しかし、今年から新しい担任の先生に替わってしまったのです。この先生は宿題も出さないし、クラスのいたずらっ子も大目に見逃してしまいます。
クラスの秩序はすっかり乱れてしまいました。特に最近、クラスの何人かの男の子たちが、よく一緒に女の子をいじめているのですが、担任の先生はいつも知らないふりをしています。
春雪は高橋先生のことを懐かしく思っていて、ある日同級生に「高橋先生がまだ私たちの担任だったらいいのになあ。」と言ってしまったところ、それが担任の先生の耳に入ってしまったようでした。
それからというもの、春雪の悩み事がぞくぞくと出てきたのです。ある日、昼食の時間に、春雪はどうもご飯をそのまま食べられなくて、味噌汁をご飯にかけて、「ぶっかけ飯」にしたのです。
あるいたずらっ子は、すぐそばで大きな声で「張さんの食べ方は気持ち悪い!」と叫んだのです。彼の仲間もそれにのって、春雪の席を囲んで「張さん気持ち悪い!」とからかい始めました。結局春雪は昼食を食べることができませんでした。
誰かが、その出来事を担任の先生に報告しました。午後、担任の先生が授業で「誰が張さんを気持ち悪いと言ったの?」とクラスのみんなに聞きました。
すると6人の男子が、自分たちがやったと認めました。これで先生はきっと彼らを注意するだろうと、春雪は思ったのです。
しかし、先生は彼らに何も注意する言葉を言いませんでした。それどころか、先生は続けて言ったのです。「他に張さんが気持ち悪いと思っている人いますか?」と、煽るような聞き方をしたのです。
クラスの生徒は、先生に全く責める気がないと見て、つぎつぎと立ちました。全クラス32人のうち、座ったままでいたのは春雪以外に、男子生徒1人と女子生徒2人だけでした。
座っていた男子学生は、普段自分の意見をきちんと持っていて、無理にみんなに合わせるようなタイプではありませんでした。
2人の女子生徒たちは、ふだん春雪と遊ぶことがないのであまり知らない子たちでしたが、ただ彼女たちが仲が良いということだけは知っていました。
先生は2、3回同じ質問を繰り返しましたが、その3人が立つ意思がないと見ると、仕方なくやっと「座りなさい。」と言ったのです。
ついでに、「これからは同級生の悪口を言わないでくださいね。」と軽く一言でこの件を済ませてしまったのです。
この日から春雪はとても落ち込んでしまいました。すべて自分が悪いと思ってしまったのです。家では、味噌汁をご飯の上にかけるのは、行儀が悪いからよしなさいと、いつもパパに言われていたのです。
今日の事を春雪はパパに隠すことにしました。しばらくしてママは春雪が何かおかしいと気づきました。あと1週間で春休みに入るのに、春雪はこの頃学校に行くのを嫌がっているみたいです。しかも、急に引越ししようとママを急き立てるのです。
ママは、学校で何かあったのかと春雪に聞きました。春雪はようやくこの間の出来事をママに打ち明けました。ただし、パパに言わないでという条件付きでした。
春休みに入りました。ある日、春雪が外で遊んでいる時、ママはパパに引越しのことを切り出しました。パパが何故?と聞くと、ママは、春雪のために良い環境を作ってあげたい、いじめのないところに引っ越してあげたいと言ったのです。
パパは不思議な顔で、何か春雪がいじめでも受けたのか?と聞き返したのです。すると、ママは学校の事をパパに打ち明けました。
その話を聞いたパパは、「こんな大事なことをなぜ早く言わないんだ。引越しはいつでもできるけど、このまま引っ越しするのはダメだ!子供に逃げる習慣をつけさせちゃダメ。
世の中どこにでも悪い人はいるものだし、一生逃げ回るつもりなのか?相手に立ち向かわなくちゃ、失敗したら仕方ないけど、何も反抗しないままで逃げてしまうのは良くないぞ!」と、ママを責めたのです。
春雪は外から帰ってきました。ずっと春雪の帰りを待っていたパパは、春雪にその日のことを詳しく聞いたのです。春雪の話が終わってから、パパはこう言いました。
「春雪は何も間違っていない。これは先生がいけなかったんだ。先生がみんなを煽って春雪をいじめたんだ。パパは校長先生に話しに行くよ。早くこの先生の間違いを直してもらいたい。それでもまだダメだったら、パパは市の教育委員会、県の教育委員会まで訴えるよ。
そもそも春雪の食べ方の問題なのに、先生が‘みんなで春雪を嫌がる’ことを煽ってしまうなんて、ひどすぎる!これは完全に‘イジメ’だよ。
俺は前から、クラス全員が一人の生徒をいじめるなんてこと、どうやったら出来るのかと不思議だったけど、なるほど今はよく分かったよ。」
そこでママも「早いうちにこの事に気づいて良かった。でないと、子供が正確に事を理解できないままで、この先、精神的に大きな負担を背負ってしまう。自信まで無くしてしまう。本当にひどい!」と、事の重要性を悟ったのです。
翌日、パパが仕事に出かけた後、ママは学校に電話をしました。二回も電話しましたが、あいにく校長先生は不在でした。
その後、友達のママから、新学期が始まったら担任の先生がまた代わるらしいと聞いて、春雪のママは、どうせ来年担任が代わるのなら、あの先生のことはもういいと思うようになりました。
パパとママは「先生が間違える時もあるのだから、これから学校で何かあったら、パパとママに隠さないで、みんなで一緒に問題を解決しよう。」と、春雪にくり返し自信を与えたのです。
春休み中、先生に聞かれても立たなかったあの二人の女の子と春雪は、一緒によく遊ぶようになりました。彼女達はすぐ仲良くなったようです。それに彼女たちは、近くの公園で出会った男の子たちと一緒に、仲良く楽しい春休みを過ごすことができたのです。
そうしていよいよ新学期が始まりました。今度の新しい担任の先生は、前の先生よりずっと良い人そうです。この先生は説得力があり、勉強の面も重視しています。それに、クラスの生徒もたくさん入れ替わりました。
しばらくして、去年のあの事で春雪をいじめた一人の男子生徒が、自ら春雪にお詫びに来たのです。他の5人も口では言いませんでしたが、でも一緒にいじめることはなくなりました。
春雪は今の担任の先生がとても好きで、学校も以前のように楽しくなったようです。